インタビュー Interview
眼鏡デザイナー 笠島 博信 さん
1971年鯖江市生まれ。1994年(株)ボストンクラブ入社。自社ブランド JAPONISM をはじめ数々のブランドの立ち上げに参加。近年は医療分野や電子機器としてのアイウェアデザインにも携わる。2015年より京都精華大学で日本初となるアイウェアデザイン科目を担当、若手の育成にも力を注ぐ。手に持つのは笠島さんがデザインしたフェイスシールド「cookai(空快)」。
福井県鯖江市で生まれたフェイスシールドが今、注目を集めている。開発したのは、眼鏡デザイナーの笠島博信さん。自動車や家電、文具など幅広い製品のプロダクトデザインを学んだ後に故郷の鯖江で眼鏡のデザインに携わって25年あまり。高い品質と優れたデザイン性で評価される「めがねのまち鯖江」ブランドを牽引してきた眼鏡デザイナーのひとりだ。
「ずっと眼鏡のデザインをしてきて、まさかフェイスシールドをつくるとは思っていませんでした」。そう話す笠島さんがフェイスシールドに関心を持ったのは、2020年の初夏。新型コロナウイルスによる緊急事態宣言が解除され、社会がようやく動き始めた頃だった。
「飲食店をはじめ、さまざまな施設で働く方々の姿を報道で見ました。皆さんが装着しているフェイスシールドがとても不自然で違和感のあるものに感じられて、自分にできることはないかと考えたんです」。
マスクを着けて働き続けたため顔の皮膚が傷ついた医療従事者の姿も心に残った。また、笠島さん自身が聴覚障がいを持ち、口を隠して音を遮るマスクの着用が日常化したことで人との対話に困難を感じる場面も増えた。それらの課題が、「見た目が美しく自然で、顔に触れないフェイスシールド」という着想につながった。その後、数十回の試作を経て完成したのが、縁のない透明シールドを後頭部とこめかみで支えるデザインを採用したフェイスシールド「cookai( 空快 )」だ。
長時間でも負担なく着けられるか、多くの人の頭部にフィットするかなど、眼鏡フレームのノウハウが活かされています。特に、わずかの差でその人の印象が変わってしまうのが眼鏡のデザイン。フェイスシールドを着ける人も話す相手も気にならない自然なデザインを追求しました」。
完成したcookaiを使用した人たちの評価は上々で、海外からの問い合わせもあったという。地域に培われた技術から生まれたこのフェイスシールドが、これからは世界中で笑顔の見えるコミュニケーションを増やしていくかもしれない。